こんにちわ、すずらんです。
今日もブログをご覧いただきありがとうございます 🙂
今日は映画『紙の月』の感想、考察です。
美しき犯罪者に憧れをも抱いてしまう自分自身に「何なんだ!」ともがき苦しみ・・・
それでも圧巻のラストに諭される。
完全に『紙の月』の虜になってしまった、自分自身が複雑でもあります。
目次
映画『紙の月』
映画『紙の月』予告編はコチラ♪
映画『紙の月』あらすじ
バブルがはじけて間もない1994年、銀行の契約社員として働く平凡な主婦・梅澤梨花(宮沢りえ)は綿密な仕事への取り組みや周囲への気配りが好意的に評価され、上司や顧客から信頼されるようになる。一方、自分に関心のない夫との関係にむなしさを抱く中、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に陥っていく。彼と逢瀬を重ねていくうちに金銭感覚がまひしてしまった梨花は、顧客の預金を使い始めてしまい……。
(シネマトゥデイより引用)
映画『紙の月』基本情報・キャスト・スタッフ
ジャンル:サスペンス
製作国:日本
監督:吉田大八
原作:角田光代
脚本:早船歌江子
音楽:緑川徹
公開:2014年
上映時間:126分
PG12指定作品
映画『紙の月』出演者
梅澤梨花:宮沢りえ
平林光太:池松壮亮
相川恵子:大島優子
梅澤正文:田辺誠一
隅より子:小林聡美
井上佑司:近藤芳正
内藤課長:大西武志
平林孝三:石橋蓮司
小山内等:佐々木勝彦
小山内光子:天光眞弓
名護たまえ:中原ひとみ
中学生時代の梅澤梨花:平祐奈
etc
映画『紙の月』受賞
第27回東京国際映画祭コンペティション部門
最優秀女優賞:宮沢りえ、受賞
観客賞、受賞
第38回報知映画賞
主演女優賞:宮沢りえ、受賞
助演女優賞:大島優子、受賞
第88回キネマ旬報ベスト・テン
助演男優賞:池松壮亮、受賞
助演女優賞:小林聡美、受賞
第38回日本アカデミー賞
優秀作品賞、受賞
最優秀主演女優賞:宮沢りえ、受賞
優秀監督賞:吉田大八、受賞
優秀助演女優賞:大島優子、受賞 小林聡美、受賞
新人俳優賞:池松壮亮、受賞
第57回ブルーリボン賞
助演男優賞:池松壮亮、受賞
助演女優賞:小林聡美、受賞
他多数受賞、ノミネート。
(あまりにもたくさんあるので1部を載せました 😉 )
映画『紙の月』感想・考察
公開当時、映画館にて鑑賞しました。
この年の国内での映画賞をなめ尽くした、まさに2014年を代表する日本映画といってもいいのではないでしょうか。
先日、プロフェッショナル仕事の流儀『もっと、自分を疑え 女優・宮沢りえ』
を見た時、フッ!と『紙の月』の衝撃が蘇りまして、考察してみることにしました。
この時に出演されていた、吉田大八監督と宮沢りえの初タッグ映画です!
与えるということの本質を覆したラスト
衝撃のラストに、思うことは人それぞれのようですね。必要ないシーンと言う方もいますし、どこまでも共感できない方もいるようです。
私はこのラストシーンが大好きでして・・・私なりの考察を記してみたいと思います。
宮沢りえ演じる梅澤梨花の、普通の人生からこぼれるように堕ち、堕ちきったラストシーンは本当に見事でした。
「まじか!そういうことか!このラストに向かって映画が進んでいたんだ!」と唸りました!
※以下ネタバレします
梨花は人に与えることに脅迫観念のように囚われ、とにかく与える、とにかく人に与える。慈悲魔に取り憑かれたような、与えることに依存した人生。
いかなる手段を使ってでも、犯罪を犯してでも与え続ける。
そして、警察の手から逃れ、行き着いた先は東南アジア。そこで彼女はある少年に出会う。その少年とは、かつてカトリック系での中学校での教えに従い、彼女がお金を与え助けるということをした相手。そして、彼女が与え続けることができなかったせいで亡くなったと思っていた少年だった。
少年は生きており、そして、その少年はリンゴを梨花に与える。
中学校での教育で受けた「人に与えましょう」という教え。教えを実行したものの、与えることを続けられなかった為に、1人の人間の人生を奪ってしまった。私のせいで。
梨花はきっと潜在的なところで、この罪を背負いながら生きていたのではないだろうか。自分の気付かない奥深いところで。与える続けることができなかった自分の罪を償うために人生を生き、人に与えることに依存してしまったのではないだろうか。
人に与えさえすれば罪を償える。人に与えさえすれば愛される。人に与えさえすれば・・・と結局は自分が救われたくて行っていたのだと思う。なんて悲しき犯罪者なんだろう・・・。
でも!ラストで!彼女の根底にあり、彼女を犯罪へと駆り立てていた源であった少年が生きていることを知るのだ。
それだけではない!更に、この少年から初めて与えられるのだ。
少年はそんなことは全く知らず、なんの見返りもなく、何も求めることなくリンゴを彼女に与える。
そう!今まで誰も満たしてくれなかった、与えられなかった無償のものを彼女は受け取るのだ。
このリンゴが象徴するものは、梨花が今までやってきた「自分が救われたい。見返りが欲しい。」というような、偽りの与えではない。
なんの見返りもない、与えきりのもの。まっさらのもの。これこそが本来の人に与えるということの本質ではないだろうか。
堕ちきった梨花は、ここで初めて、与えることの本当の意味を感じるのではないだろうか。
彼女の、過去も現在も未来までも!一気に救われる素晴らしいシーンに賛辞を送りたいです!
圧巻のラスト。これ以上のラストってないと思う。
なぜ中学時代に、与えることの本当の意味を誰かが教えてあげなかったのか、彼女の異変に気付き手を差し伸べることをしなかったのか。
その未熟な教育や家庭環境がもたらしてしまった残酷さをも、感じました。
与えるということは何なのか。与えることの本質は何なのか。与えることの本当の意味とは。
この作品を見て、一人一人、何か感じるところがあるかもしれません。
お金を与えるということに限らず。
例えば日常、誰かに親切にしたり助けたりする時、
「感謝されたい」とか「褒められたい」とか「偉いと思われたい」とか・・・
どこかでするっと心の中に流れるこの思い、どっかで見返り求めちゃってるなあって思いました。
人間をあぶり出す吉田大八監督
銀行のお金を横領するなんて、そもそも!ほんとダメ人間だしクソ人間だし(言葉が悪くてすみません 😳 )
でも、これらの枠から外れていく人間達を、ダメともクソとも描かないのが吉田監督の素晴らしさなんだと思います。
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、『クヒオ大佐』、『桐島、部活やめるってよ』・・・
今までの作品を見てもそうですが、登場人物は本当にダメ人間でクズ人間で、
でも一体何故そうなってしまったのか、彼ら彼女らを突き動かしているものは一体何なのか。そしてどういう過程で変化していくのか・・・
本当に見事に、そして丁寧に描くんですよね。
『紙の月』では、梨花を、ただの犯罪者として裁くような描き方をしていません。
罪を犯す彼女は、一見特殊な人間に見えるのかもしれません。
でも本来は、真面目で、不器用で、どこにでもいる普通の平凡な女性。
日常抱えているものも、仕事上の人間関係だったり、同じことの繰り返しの生活だったり、夫との関係性だったり、みんなが当たり前のように抱えている葛藤。
そこから、どこかで開放を求めていて、思いこみの激しい性格がただ引き金になった・・・その狂気と恐ろしさを感じさせてくるんですね。吉田監督は。
その堕ちていく様も、決して特別な大事件のように描くのではなく、気付かないうちになにかの罠にはまっていくように、スルスルっと・・・でもとても丁寧に描いています。
映画『紙の月』まとめ
与えるということは一体何なのか、ラストのラストに気付かせ、私を諭してもくれた『紙の月』。
一方で、枠からはみ出て自由を手に入れようとする梨花に対し、どこかで「羨ましいな。」と憧れを感じてしまう。そんな自分が恐ろしくもなった『紙の月』。
ストーリーはシンプルですが、描かれているのは深く、複雑にからみついてくる、綺麗事抜きの人間の本質です。
是非ご覧になってみて下さいね。
映画の内容のことばかりに夢中になって書いてしまい、お気に入りシーンや俳優達の演技について書ききれませんでした 😳
宮沢りえ、大島優子、そして小林聡美の素晴らしい演技。またの機会に考察したいと思います!
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それでは、今宵は、この辺で・・・ 🙂