こんにちわ、すずらんです。
今日もブログをご覧いただきありがとうございます 🙂
今日は映画『その夜の侍』の感想、考察です。
憎しみの裏側にある、真実の姿を覗いてしまった。
嘘!?憎しみで人が繋がれるなんて!?
衝撃のラストシーンに美しさを見出してしまった私って・・・おかしいのでしょうか?
目次
映画『その夜の侍』
映画『その夜の侍』予告編はコチラ♪
映画『その夜の侍』あらすじ
小さな鉄工所を営む中年男、中村健一(堺雅人)。
中村は、妻の中村久子(坂井真紀)と、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、妻は木島宏(山田孝之)が運転するトラックにひき逃げされ、亡くなってしまう。
突然の事件を受け入れることができない中村。
妻が死んで5年間、中村は仕事から帰ると家に引きこもり、亡き妻の留守電メッセージを、繰り返し繰り返し再生しながら、好物のプリンを食べ続ける生活を送っていた。
そんな中、妻を殺した木島が出所する。
「お前を殺して、俺は死ぬ。決行日まであと○日。」
という脅迫状を、毎日1通づつ、木島に送り続ける中村。
決行日とは妻がひき逃げされた8月10日。
脅迫状に怯えながらも悪びれることなく、ひょうひょうと生きる木島。
そしていよいよ、決行日の8月10日がやってきた。
映画『その夜の侍』基本情報・キャスト・スタッフ
ジャンル:ドラマ
製作国:日本
監督:赤堀雅秋
原作:赤堀雅秋
脚本:赤堀雅秋
公開:2012年
上映時間:119分
PG12指定
映画『その夜の侍』出演者
中村健一:堺雅人
木島宏:山田孝之
青木順一:新井浩文
小林英明:綾野剛
中村久子:坂井真紀
星信夫:田口トモロヲ
小林昭子:木南晴夏
関由美子:谷村美月
久保浩平:高橋努
川村幸子:山田キヌヲ
ミカ:安藤サクラ
佐藤進:でんでん
etc
映画『その夜の侍』感想・考察
映画『その夜の侍』は、全編が内容も暗く、映像も暗く進んでいく映画であります。
一見、救いのない辛い内容に思われるかもしれませんが、ラスト、とんでもないところに1筋の救いがあります!
不思議な映画『その夜の侍』、早速考察していきます!
笑顔を封印したサバイバル堺雅人
堺雅人といえば、喜怒哀楽を笑顔で表現してしまう、ユニークさを持った俳優さんですよね。
そこが彼の個性であり、長所であり、表現者としての武器であると思います。
「ここで笑顔で表現するか!」
「ここでも笑顔で表現するか!」
「こんなにいろんな笑顔があるもんだ!」
出演作品を見ていると、いつもなるほどーっといつも私は唸ってしまいます。
堺雅人のあの独特の笑顔に引き込まれ、思わず笑ってしまったり、癒されたり、魅了された人もたくさんいるのではないでしょうか。
しかし、あの独自の笑顔を封印してしまった、映画『その夜の侍』。
更に、分厚い眼鏡で目の表現さえも封印してしまった、映画『その夜の侍』。
眼鏡の奥の笑わない瞳が不気味で恐く、封印どころか浮き立ちまくっております。
まるで別人です。まるで堺雅人ではない別の人間が演じている様にしょっぱなからビビリます。
俳優は何か特定のイメージがついてしまうと、どうしてもそのイメージを持った役を演じることになったり、自らもその長所を使って演じてしまったり、そうなりがちな日本映画界ではありますよね。
その中で、堺雅人の底力をガンガン見せつけられました!
映画『その夜の侍』には上っ面の表現なんてものも、皆無です。
そして、映画『その夜の侍』の世界の中で、なんだか堺雅人自身も生き生きしている感じもするんですよね。
まるで演じることを、子供のようにめちゃくちゃ楽しんでいるような。
普段仕事をしたり、人と接する中で、何かをアピールしたり、勝負する時って、
どうしても自分の良い所や得意分野を相手に見せて、その戦力でもって進もうとしますよね。
それが当然なところって、誰しもあると思います。
でもその真逆かもしれない、自分の弱点や、自分自身でもよく分かっていない何かでもって戦うことが、
「こんなにもスリリングで面白いものなのか!」
映画『その夜の侍』での彼の演技を見ていると、ふつふつとサバイバル精神のようなものが湧いてきます。
ブレイク前の綾野剛の青白さ
今や、日本の映画界ではなくてはならない存在になった綾野剛。
映画『その夜の侍』では、助手席に乗りひき逃げ事件巻き込まれてしまう、木島の友人として出演してます。
当時の綾野剛は、まだそこまでブレイクしていない頃ではないでしょうか。
しかしそこには、役なのか彼自身なのか分かりませんが、余裕がないほどに必死に演技に食らい付き、生々しく繊細な表現を奏でる綾野剛がいます。
例えば、ひき逃げ事件を起こし、動揺し、顔が青白くなり過呼吸になってしまうシーン。
見ているこちら側も呼吸が乱れてしまいそうな位、綾野剛の演技は素晴らしいです。
暗い映像であっても、綾野剛のあの青白い血管は輝いているのです 🙂
リアリティー尽くす赤堀雅秋監督
ちょっとびっくりしたのですが、映画『その夜の侍』は赤堀雅秋監督の初監督作品なのですね。
彼は劇団「THE SHAMPOO HAT」でたくさんの作品を生み出しており、『その夜の侍』も元々はこの劇団で上演したものだそうです。
正直、ここまで徹底してリアリティー尽くして映画を撮る映画監督は、類を見ないのではないでしょうか。
人殺しってこんな人でしょ。
復讐に燃える人ってこんな人でしょ。
優しい人ってこんな人でしょ。
弱い人ってこんな人でしょ。
流されちゃう人ってこんな人でしょ。
悪い人ってこんな人でしょ。
いい加減な人ってこんな人でしょ。
「人ってこんなんでしょ。」
ついつい、
自分が安心したいが故に、楽したいが故に、型にあてはめがちな定義を、赤堀雅秋監督は見事にひっくり返してきます。
真摯な表現でもって。
本当はこうな行動もするんじゃないかとか。
本当はこういう主張があるんじゃないかとか。
本当はこうな風に思っているんじゃないかとか。
映画『その夜の侍』に出てくる人物1人1人を、リアリティーの中に隠されたリアリティーのところまで徹底的に描き、「本当にそうですか?それが本当ですか?」と私を追い詰めてきます。
人のバランスの悪さを、嫌悪ではなく、愛おしいと思うところまで、本質までとことんあぶり出してきます。
だからきっと、クズのような人物も、一見善人のように見える人物も、等しく、同じ愛おしさを感じさせ、迫ってくるんです!
ラスト!深く繋がってしまうの!?
被害者と加害者である、中村と木島の決闘のシーンが、ちょっと不思議な展開を見せます。
復讐心がなければ生き続けることができなかった中村と、
暴力がなければ生き続けることができなかった木島。
恐れ、憎み、恨んでいた相手同士が、心も体も本気で衝突します。
ネタバレになってしまうので具体的に書けませんが、
その先にあるのは・・・
2人の深い繋がり。
まるで相手に自分を見出すように、救いを見出すように、深く結ばれていきます。
泥まみれの人間臭いシーンですが、何かの奇跡の瞬間を見ているような美しいシーンです。
映画『その夜の侍』まとめ
「愛が深ければ憎しみも深くなる。」
この感覚って分かりやすいですよね。
相手を愛せれば愛する程、裏切られた時の憎しみや怒りや嫉妬心は深いものです。
映画、本、絵画、音楽など芸術においてよく描かれますよね。
しかし!!映画『その夜の侍』は、
「憎しみが深ければまた愛も深くなる!?」
この摩訶不思議な救いの瞬間・・・体感してみたくありません?
それでは、今宵は、この辺で・・・ 🙂